花滝×ティーウッド 〈フランス箱〉開発秘話
今回新商品としてリリースされたフランス箱。
その詳細なデザインへのこだわりと、徹底したクオリティの追及について、株式会社ティーウッド(T-WOOD)後継者の高橋氏と、花滝代表の小林氏の対談をインタビュー形式でお届け!
✅フランス箱のこだわりとは?
高橋(T-WOOD) 今回新たにフランス箱という新商品を開発することが出来ました。あらためてフランス箱のプロデュースにあたって、こだわったポイントを教えていただけますか?
小林(花滝) そうですね。フランス箱は、私自身が標本商として日々標本を扱い、お客様と交流していく中で得た経験を元に、理想を詰め込み考案しました。
当店(花滝)ではクワガタやカブトムシなどの大型昆虫をメインに取り扱っているのですが、基本的に大型の標本箱は使用していません。すべて中型サイズを使用しています。
よくお客様から「花滝さんの標本は大きく見える」と言っていただきます。これには理由があって、実はそれはヨーロッパで購入した中形サイズの標本箱を使用しているからなんです。
ヨーロッパに行って、現地のコレクターのコレクションを見てると、やたらと虫が大きく、かっこよく見えるんですよね。しかしそれは何故なのか...理由を考えてみると、実は箱のサイズに秘密がありました。
あえて大型ではなく、中型の箱を使用することによって、箱に対する虫の占有比率が上がるのです。大型の箱だとスカスカ感が出てしまいますが、中型だとほどよいパツパツ感が出ます。
また、白が膨張色であるという影響も大きいです。例えばひとつ、わかりやすい例を挙げてみましょう。
真っ白な布がある風景をイメージしてください。それぞれリビングの絨毯サイズの大型のものと、小さなハンカチサイズもの、2種類があるとします。それぞれの上に同じ大きさのリンゴを置いたとき、どちらのリンゴの方が大きく見ると思いますか?
高橋 ハンカチの上に置いたリンゴの方が大きく見えると思います。
小林 おっしゃる通りです。背景の余白が大きいと、本来主役であるはずのリンゴではなく、背景の白い絨毯の方に視線が誘導されてしまうんですよね。
ですので標本箱も、背景の白いぺフの面積はある程度抑えた方がいい。つまり「適度な小ささ」が標本を引き立てるんですよ。そこに着想を得て、今回のフランス箱はヨーロッパで実際に彼らが使用しているものと同等のサイズ感(中箱と同じくらい)で設計しました」
高橋 なるほど!やはり自分のコレクションが大きく、かっこよく見えることは重要ですからね。
 

元来のドイツ箱は縦方向にやや長いため、標本の上部と下部に大きな余白が生まれてしまう。それを抑えたフランス箱は、大型モルフォの「丁度良い収まり感」が気持ち良い。
✅高級感あふれるツヤあり仕上げ
小林 フランス箱は強い光沢のコーティングを施し、艶ありの標本箱として高級感を出していただくようお願いしました。
これは実際に製造に携わっている高橋さんから教えていただいたことですが、一口に艶を出すと言ってもかなりの手間と費用がかかってしまうそうですね。
高橋 そうですね。艶を出すためにはまず材料の選定から重要で、上質なものを使用しています。そして木地表面を研磨する作業に高い技術も必要とされます。
さらに塗装工程においても吹付作業の下吹き工程が多く底板は艶消し塗装の為、標本箱に養生をする工程も増えるんです。したがって、フランス箱は塗装前の研磨の回数と仕上げのクオリティーが高いです。艶あり塗装は材料も経費もかかる高級品といえますね。

小林 なるほど、それは大変な作業ですね...。しかしやはり艶は大事です。せっかく標本を良く見せることに特化した箱をプロデュースするわけですから、そこは譲れません(笑)
高橋 そうですね。実際には艶ありのものを手にしたときの高級感、印象はだいぶ違いますからね(笑)。「虫を良く見せる」という手法のひとつとして、艶ありが譲れないポイントだというのは納得です。艶があると指のグリップが効くの箱の開閉もしやすくなるのが良いですね。
 
✅標本箱のクオリティ
小林 私は今、本場のフランスで購入した本場のフランス箱を所持しているのですが、それらはどれも密閉性が今一つなんですよね。
ヨーロッパは乾燥しているので、標本を食い荒らす害虫が発生しにくいですし、展足も崩れない。だから密閉性は必要ないと。しかし日本ではそうはいきません。
T-WOODさんの標本箱を使用していて思うのですが、蓋の閉まり具合が素晴らしいんですよ。無理にこじ開けなくても、スポっとしなやかに開く。
たまにガチガチにきつい標本箱を目にしますが、正直言って蓋は固ければ固いほど良いというものではありません。
固すぎると開ける際に蓋やガラスの破損にもつながりますし、とりまわしも良くない。さらにはチョウやガなどを入れた際に、固いといきなり蓋が開いたときの風圧で、翅がダメージを負ってしまうこともある。
このあたりの蓋の固さについて、もしかして何か工夫されていたりしますか?
高橋 まず、標本箱の材料にもこだわって国産の朴材(ほおざい)を使用しています。標本箱=朴材というくらい朴材は標本箱に適した木材ですね。節や腐れの無い乾燥もしっかりしている反りの少ない上質な材料を仕入れています。
そして当社の標本箱は本体の淵の部分と蓋が凸凹でかみ合い、湿気や害虫の侵入を防ぐ構造になっています。上質な材料を使用する事でその隙間、わずか0.025㎜の緻密な設計を可能にし、職人の高度な技術で蓋の閉まり具合もお客様が開閉しやすい様に調整しています。
小林 それは素晴らしい技術ですね。このスムーズな蓋の開き具合も魅力の一つだと思っているので、納得です。
 

岡山県のティーウッド本社工場にて、熟練の職人がひとつひとつ丁寧に仕上げている。
✅10㎜の肉厚ぺフを贅沢に使用
小林 持ち運びについてもう一点こだわった点として、今回はT-WOODさんになんとかお願いして10mmの肉厚ぺフを使用していただきました。これまで国内で販売された標本箱は大抵どれも6mm程度の厚さのものでしたが、これだとちょと薄く感じるんですよ
高橋 10mmというとかなり厚みがありますからね。頭の形がT型だからこそ外寸60mmのまま10mmペフを入れることが出来ました。N型だと形状上どうしてもガラス面が外寸から7mm下がってしまうんです。それに比べてT型は外寸からガラス面まで4mmの形状、その差は1㎜なのでN型の内寸使用感で10mmのペフが使えるといったところです。
T-WOOD製のT型だからこそできたフランス箱の規格サイズですね。
小林 ヨーロッパでは10mmの肉厚ぺフが主流なんです。6mmと10mmを比較すると、もう疑いの余地なく圧倒的に10㎜の方が良いです。なので私自身ずっと10mmぺフの箱が欲しいと思っていました。
針先が奥深くまでしっかりささるので標本が安定しますし、衝撃によるダメージも吸収します。さらには輸送の際の容器としても使えるのが素晴らしいですね。配送担当者が多少手荒く扱ったとしても、しっかり針を刺して固定してあれば、大型のカブトムシなんかも針が外れて標本箱の中を転げまわることはありません。
ぺフの厚さに関して言えば、まさに「大は小を兼ねる」です。刺した時の感触も気持ちいいですし、一度10㎜の肉厚ぺフを使ったらもう戻れません(笑)
✅持ち運びに便利な標本箱
小林 実際に出来上がったサンプルを手にして驚いたのですが、これ、非常に軽いんですよ(笑)これまでヨーロッパで購入した、いわゆる「本場の」フランス箱を使用していたのですが、どれもとんでもなく重い(笑)。密閉度、強度、どれをとっても今回作成したフランス箱の方が上なのに、軽さまで勝っています。
高橋 標本箱の材料である朴材は、日本に自生する「ホオノキ」から作られる木材です。軽くて柔らかく、肌目が均質で緻密な木目で加工しやすいことが特徴なんです。また、乾燥後の割れや反りが少ない特性もあります。昔は刃物で傷つきにくく刃物がさびないので刀の鞘やまな板に使用されていたようですね。
小林 まな板用ですか、それは納得です。あと、持ってみるとわかるんですけど、小脇に抱えるのになんとも言えない安定感といいますか、ちょうど良いサイズ感なんですよね。
即売会で標本を買うときに、小箱を持って行くと、すぐに埋まってしまうんですよ。しかもチョウやバッタなんかを買った日には、それ一頭でほぼスペースが占領されてしまい、別の標本が買えないんです。
その点この箱は良いですよ。小箱の倍は容量がありますし、小脇にスポッと収まるサイズでちょうどいい。腕にぴったり収まる絶妙なサイズなので、持ち運びたくなります。
高橋 花滝さんがこだわったサイズと艶あり塗装のフランス箱。大手町インセクトフェアで初めて販売するのでぜひ購入して、会場で使ってほしいですね。
T-WOOD&花滝ブース2か所にて販売予定です。会場4F同じフロアですのでどちらで購入されてもかまいません。フランス箱は日本だけでなくヨーロッパ諸国にも広めていきたい箱です(笑)高級感と気密性に驚かれるはず!!
 
■フランス箱販売に関して
9月23日に開催される大手町インセクトフェアの「花滝」および「ティーウッド」のスペース内にて、数量限定で先行販売を実施いたします。
コレクション用として、そして移動用の標本箱として、ぜひお買い求めください。
現在、フランス箱の通信販売および店頭販売は行っておりません。
インセクトフェアにおける先行販売の終了後に販売ページを公開いたしますので、今暫くお待ちいただくようお願い申し上げます。
また、当商品の取り扱いをご検討される各昆虫ショップ様や通信販売業者様におかれましては、その旨をお問合せフォームよりご連絡下いただきますようお願い申し上げます。代表小林から詳細に関して折り返しご連絡を差し上げます。
 

小林 フランス箱は私が「こんな箱あったらいいな」というのを全て実現していただいたので、いろんな箱の「いいとこどり」をした最強の標本箱です。忖度抜きに良いものだと自信をもって言えます。
ヨーロッパで長年愛されているのが間違いのない証拠ですので、令和の標本蒐集のスタンダードとして、ぜひ多くの方に利用していただきたいですね。
高橋 日本の標本箱メーカーとして花滝さんとのコラボ商品が製造できたこと本当に嬉しく思います。当社製品にも小箱が様々ありますが、小林さんのような若い世代の方には小箱は人気があります。
軽くて持ち運びが良く、作業しやすい点は製造過程においても同様に感じます。1つの箱に沢山の標本をコレクションする世代から小さい箱にお気に入りの標本を入れてインテリアのように部屋に飾ってみたり、展示会などで標本をアート作品として魅せる世代へと時代の変化も感じられます。
フランス箱の収納庫も今後コラボ商品化の検討をしていきたいですね。小林さんの思いが詰まったフランス箱がバズりますように…
 
■製品概要
-商品名:フランス箱
-サイズ:W390mm×D260mm×H60mm
-種類:全一種(艶あり黒、UXカットフィルム貼り)
-仕様:厚さ10㎜ぺフ、UVカットフィルム貼り、木製標本箱
-価格:¥9,800 (新製品リリース記念 大手町インセクトフェア特別特価。消費税込み)
※今後の店頭販売価格、および各種通信販売サイト上での販売価格は上記とは異なる場合がございます。あらかじめご了承下さい。
-ご購入方法:大手町インセクトフェア(2025年9月23日開催)にて先行発売の後、各昆虫ショップ・通信販売サイト上にて販売開始予定。

