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BRUTUS珍奇昆虫2 メイン記事企画、協力を担当しました【舞台裏日記】

更新日:5月25日



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昆虫好きのみならず、大ヒットを記録したBRUTUS珍奇昆虫特集1(株式会社マガジンハウス)から早5年。珍奇昆虫特集2のメイン記事、特集の企画作成に当店の小林・福井が携わりました。


珍奇昆虫2の企画打ち合わせがスタートしたのは発売の約1年前。珍奇昆虫1よりもさらにディープに、かつBRUTUSらしく「映える」誌面にすべく、当店よりメイン特集としてヨーロッパの昆虫業界の特集をご提案させていただきました。


2024年4月上旬、当店小林・福井をはじめ、担当ディレクターと現地カメラマンなどで構成された取材チームで、一週間のイタリア&イギリスロケが決行されました。






大英自然史博物館でのグラビア撮影作業。撮影完了まで2日を要しました。
大英自然史博物館でのグラビア撮影作業。撮影完了まで2日を要しました。



これまで「昆虫そのもの」に関する書籍は数多く出版されてきましたが、「昆虫を取り巻くカルチャー」がフォーカスされてきたケースはごくわずか。欧州では古くより昆虫標本蒐集は上流階級における文化的な趣味として、骨董や絵画と同じ扱いを受けて親しまれてきました。これは、昆虫というとなにかと「子供のものためのもの」という括りから離れられない日本におけるカルチャーとは全く異なるものです。


日本は自他ともに認める昆虫大国です。大規模なインセクトフェアや昆虫展、そして多数の研究者による目覚ましい研究成果の数々など、昨今では間違いなく世界をリードする業界規模を誇ります。


しかし、欧州の知識階級の人々によって長い期間を経て育まれた「標本蒐集文化」を見ていると、まだまだ日本人が到達できていない部分が多くあることに気づかされます。





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例えばこのカブトムシの研究家プランディー。彼はアートセンスに長けた男で、「標本箱はアートだ」と言い切る豪快な男。


我々日本人にとっては、あくまで標本箱は「標本を安全に保管しておくための場所」としての役割しか果たしていないのではないでしょうか。


しかしながら彼が言うには、標本箱はアートのキャンバスなのです。せっかくお気に入りの、良い標本を入れるのであれば、その標本の良さがより引き立つようなデザインの箱に仕上げるべきだというのです。


美術館で展示されている素晴らしい西洋画は、どれもそれに見合った豪華な彫刻と金箔で仕立てられたフレーム(額縁)に収められています。ゴッホやモネの作品を、適当に安価なフレームには入れないでしょう。解説パネルでさえ雰囲気にマッチしたものが用意されているはずです。


このように、素晴らしい標本をより素晴らしく見せるためには、標本箱や周辺ディスプレイを舞台装置として活躍させるのです。標本箱のデザインにまでこり出すのが欧州の一流コレクター。昆虫大国を自称する我々日本人でも、まだまだ到達できていない領域があることを痛感させられました。




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こちらのタローニはイタリアの超高級別荘地、コモ湖の湖畔に屋敷を構える「本物の貴族」。なんと歴史の教科書にも登場するビスコンティ家の末裔で、城を模したルネサンス様式の大豪邸に住みます。


世界で数頭しか現存が確認されていないサソリクワガタを所持するなど、ただモノではありません。



タローニコレクションのハイライト、サソリクワガタ(Platyfigulus scorpio)。現在知られている限りでは本種の標本を個人所有しているのは世界でタローニただ一人のみ。
タローニコレクションのハイライト、サソリクワガタ(Platyfigulus scorpio)。現在知られている限りでは本種の標本を個人所有しているのは世界でタローニただ一人のみ。


珍しいクワガタ、コロフォン属のコレクションもずらり。
珍しいクワガタ、コロフォン属のコレクションもずらり。

タローニの豪邸にて。真っ赤な壁を埋め尽くす一面の絵画あり、迷宮のような無数の部屋あり。隠し扉に地下室、はたまたツツジが美しく咲き乱れる日本庭園もあるという、まるで映画に出てくるような邸宅でした。
タローニの豪邸にて。真っ赤な壁を埋め尽くす一面の絵画あり、迷宮のような無数の部屋あり。隠し扉に地下室、はたまたツツジが美しく咲き乱れる日本庭園もあるという、まるで映画に出てくるような邸宅でした。



こうした伝統と格式ある家系の当主が趣味として嗜むのが昆虫標本蒐集です。


この令和の世に「17世紀から続く欧州の伝統的な、上流階級の趣味としての標本蒐集」という文化の残り香を記録することが出来た。それだけでも今回の特集は意義のあるものに仕上がったのではないかと思います。


「こういったカルチャーも世の中には存在する」という様々な文化を紹介するのがBRUTUSの素晴らしい点であると思います。欧州の知識人たちによって育まれてきた昆虫標本蒐集文化。おそらく多くの読者の皆様にとっては初めて目にする昆虫文化だったのではないでしょうか。

読者の皆様に新たな知見とカルチャーをご紹介出来たのであれば幸いです。







本誌未使用カット。タロー二(左)とプランディー(右)。イタリアのビッグコレクター二人の貴重なショット。タローニは標本だけでなく美術関連の書籍のコレクションも尋常ではない。タローニ宅地下の巨大な書庫にて。
本誌未使用カット。タロー二(左)とプランディー(右)。イタリアのビッグコレクター二人の貴重なショット。タローニは標本だけでなく美術関連の書籍のコレクションも尋常ではない。タローニ宅地下の巨大な書庫にて。



マラッツィが誇るカミキリムシコレクション。学術的な美しいラベルとディスプレイが特徴的。
マラッツィが誇るカミキリムシコレクション。学術的な美しいラベルとディスプレイが特徴的。



イタリアでは3日取材をおこない、その後イギリスへ移動。当店代表の小林が大学の学部生時代にお世話になったバークレー主任学芸員と松本学芸員に協力を依頼し、大英自然史博物館の取材を決行。


本誌では「大英自然史博物館のバックヤードセレクション」と題し、博物館所蔵の標本の中でも特に貴重で見栄えのする甲虫をピックアップしてご紹介しました。





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大英自然史博物館のマックス・バークレー主任学芸員。本誌では1600年代に採集された貴重な標本を紹介。バークレー主任学芸員のID認証なしでは立ち入ることが出来ない博物館の最奥部に特別に保管されている。
大英自然史博物館のマックス・バークレー主任学芸員。本誌では1600年代に採集された貴重な標本を紹介。バークレー主任学芸員のID認証なしでは立ち入ることが出来ない博物館の最奥部に特別に保管されている。



大英自然史博物館のバックヤードのコレクションを手に取る福井。真剣に観察しているのは彼によって一躍有名な昆虫になったと言っても過言ではないランシフェルニジダイコクコガネ。
大英自然史博物館のバックヤードのコレクションを手に取る福井。真剣に観察しているのは彼によって一躍有名な昆虫になったと言っても過言ではないランシフェルニジダイコクコガネ。

本誌未使用カット。本の形状の標本箱に入った1800年代のヒストリカルコレクション。見栄えは雰囲気があって良いのですが、取り扱いに注意が必要なのが難点です。
本誌未使用カット。本の形状の標本箱に入った1800年代のヒストリカルコレクション。見栄えは雰囲気があって良いのですが、取り扱いに注意が必要なのが難点です。


大英自然史博物館が所持する昆虫標本の量は凄まじく、甲虫部門だけでも体育館を2つ連結させたほどの巨大な空間に収蔵されています。


この巨大なコレクションの中なら点数を絞り出すのは至難の業でした。選出においては美麗&造形の特徴的な昆虫に精通する福井が中心となり、これまでほとんど書籍で紹介されたことが無かった珍品をご紹介することが出来ました。




松本学芸員のご協力のもと、膨大な数の標本箱から目当ての標本を捜索中。Photo: Rie Yamada
松本学芸員のご協力のもと、膨大な数の標本箱から目当ての標本を捜索中。Photo: Rie Yamada


取材を無事に終えて。珍奇昆虫1、2のメイン特集の企画をそれぞれ担当した福井(左)と小林(右)
取材を無事に終えて。珍奇昆虫1、2のメイン特集の企画をそれぞれ担当した福井(左)と小林(右)




当店では海外の昆虫愛好家の皆様や、大学や博物館関係者の皆様とご協力し、昆虫や標本にまつわるディープな企画作成や記事作成も承っております。世界各国に強いコネクションを持つ当店にぜひお任せ下さい。



■BRUTUS 珍奇昆虫2(株式会社マガジンハウス)


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※おかげ様で2025年5月3日現在、☆4.4カスタマーレビュー109件と高評価をいただいております。在庫には限りがございますのでまだご購入されていない方はぜひお早目のご購入をお願いいたします。




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