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BIRMINGHAM ENTOMOLOGICAL SHOW

(イギリス/バーミンガム)

毎年初夏に開催される、イングランド中部の都市バーミンガムで開催される昆虫・奇虫合同フェア。名前こそEntomological(昆虫(学)の)と昆虫イベントである事を大々的に冠してはいるものの、その実態はクモやヤスデ、サソリなどの奇虫の生体半分が約半分であり、残りがハンドメイド作品や標本、顕微鏡や箱などのグッズ販売である。


 標本を扱う主な出展者は南米やオセアニアまで幅広い虫を扱うレスタリオット氏や、アフリカの虫に強いウェルズ氏、そしイギリスの伝統的な標本商でありワトキンス&ドンカスター商会などが参加します。基本的に昆虫類を扱う顔ぶれはミッドランドのフェアと大差ありませんが、奇虫のエリアの規模がミッドランドとは異なるのが特徴です。
 

​ロイヤル氏の販売卓。ゴライアスオオツノハナムグリなどの巨大種から、ゴミムシダマシやタマムシのパック品まで手広く扱う。価格も安価で、コアなコレクター以外の昆虫好きもお土産用として購入していく場面をよく見かける。

 イギリスは歴史的には昆虫学が非常に盛んな地であり、かつてはコレクターも多く存在しました。それこそ歴史を紐解いてみれば、18世紀以降かつて繁栄を極めたオランダの東インド会社にとって代わって大英帝国が力をつけると、大英博物館の誕生や王立協会のジョセフバンクス後ろ盾などもあり、19世紀初頭にはイギリスが世界で最も勢いのある昆虫学の中心地となりました。その後フランス、そしてドイツでも昆虫学やコレクション文化が最盛を迎えますが、イギリスが生んだ史上最強のコレクターであるロスチャイルドや、現在まで続くワトキンス&ドンカスター商会をはじめとする様々な標本商が存在していた事実を考慮すると、いかに過去イギリスが昆虫大国であったかが見てとれよう。

 

 しかし現在は当時とは大きく状況が異なり、コレクターの数はフランスをはじめとする欧州本土の国々と比べると遥かに少数です。蝶などの鱗翅目をはじめとした国産種に興味を向ける愛好家は多少いるものの、南米やアフリカの甲虫を積極的に集めるコレクターに関しては極めてその人口が少ないことは確かです。実際に私もイギリスの昆虫コミュニティや学会などに参加し、またイギリスだけではなく欧州本土のコレクターとも交流をしてきましたが、こと甲虫に関しては「イギリスの○○さんのコレクションはすごい」なんて話は殆どでてきたためしがありません。それを裏付けるように、イギリス国内のフェアでも標本の販売に関しては積極的でなく、あったとしてもその大半は我々コレクター向けではなく「一般向け」の普通種を揃えたラインナップです。

 私自身もこのバーミンガムのフェアで過去に買ったものと言えば、ウェルズ氏が偶然在庫から持ち出してきた87㎜もある大きなウガンデンシスオオツノカナブンのオスと、折角来たのだから何か買わないで買えるのもな…と思い、ちょこちょこ摘まんだ南米の雑虫くらいしか記憶にありません。

 つまり単刀直入に言うとコレクター向けのフェアではないものの、良い意味でアマチュア向けのフェアである事から様々な工夫を凝らした展示や、生体を気軽にハンドリングさせてくれたりするなど、節足動物の総合フェアとして捉えると充実したフェアと言えるのではないでしょうか。フランスやドイツと違い当然参加者は全員英語を喋るので、出展者とも意思の疎通が容易です(フランスやドイツだと多くの出展者がフランス語やドイツ語のみを話すので、標本の詳細を訪ねるのにも苦労する事が多いのです)。会場内にはゴキブリの全身着ぐるみを着て接客する変わり者もいたり、イギリスはアンモナイトの有名な産出国ということもありアンモナイトの販売を行う人間もいます。アクセスの便も比較的良いので、もしバーミンガム付近に立ち寄る用事があれば一度訪れてみるのも良いかもしれません。
 

​イギリス南部にはアンモナイトの有名な産地があるため、大きなものでも価格は安価で購入できる。

​この会場ではクモの生体販売が多い。友人のイギリス人でもクモを好んで飼育しているし、イギリス人はクモが好きなのだろうか?

 会場の通路は広く、大手町の様に人ごみで立ち往生する・・・なんて事は断じてないので極めて快適。受付にて軽食やアルコールなども販売しているため、日本の様にきちっとした厳格なルールの下で行われる「即売会」というよりは、虫好きオヤジ共の1年に1回の交流会のような和気あいあいとした緩い雰囲気が漂うのがいいところです。タバコを吸いたくなったら会場横のスペースで勝手に吸い、ビールが飲みたくなれば自身の卓を放置して知人の卓で一杯やる、なんてことも許される空間。

 

 

■周辺・観光情報


 会場は年によって変化するものの、通常はバーミンガム駅近郊のサッカースタジアム内の多目的ホールを使用。バーミンガムはイギリス中部で最も大きい都市のうちの一つであり、大型ショッピングモールからスーパーまでなんでも揃っています。もし観光で訪れるのであれば、近辺…とは言い難いですが、レンタカーを借りて国立公園であるピークディストリクトを訪れ自然を楽しんだり、ノッティンガムやレスターといった歴史のある街を散策してみると面白いかもしれません。

​バーミンガム駅周辺は大型ショッピングモールや教会が立ち並ぶ。

​ロビンフット伝説で有名な歴史ある街、ノッティンガムを訪れてみるのもいいだろう。

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